失神について

  失神とは脳の虚血(血流の低下)によるきわめて短時間の一過性の意識消失をいいます。 通常目の前が暗くなる(眼前暗黒感)前駆症状を伴います。 突然くらっとして倒れたり、しゃがみ込んだ状態になりますが、すぐ気が付くのが一般的で、けいれんは伴いません(てんかんとの違い)。 一般の人はよく”貧血が起きたと′セわれますが、これは貧血(血液細胞成分の赤血球の減少)とは全く関係ありません。 原因として生理的なもの例えば興奮、緊張、驚愕、疲労したときに生じるもの(血管迷走神経性失神)、起立時の血圧低下によるもの(起立性低血圧で脊髄小脳変性疾患などでよくみられる)、徐脈・発作性頻拍など心臓由来によるもの(心原性)があります。通常診察時は意識は清明となっていますので、問診による病歴の検討、脳波・心電図・血圧測定(臥位と立 位での差)・自律神経機能検査等が必要です。 特に心原性の場合は生命に直接関与しますので十分の検査(できれば循環器専門の医師により)を要します。
 
  失神とまぎらわしいものとして、脳幹部の一過性脳虚血発作があります。 脳幹部とは大脳の下部に位置し、意識に関係する脳幹網様体のあるところです。 ここには脳底動脈という太い血管が走行しており、この血管が一過性につまったり、血流が低下すると意識が消失します。 失神と異なり、意識消失は突然で、眼前暗黒感等の前駆症状を欠きます。 脳幹部は生命に直接関与する中枢ですので、椎骨脳底動脈系(心臓を出て脳に行く太い血管系)の精査(血管撮影・超音波・MRI・MRA)が必要です。