嗅いが分からない

  
  嗅いが分からないという訴えで外来に来られる人は、非常に少ないですが神経内科領域の症状なります。 臭いに関係する神経は嗅神経(第J脳神経)です。 嗅覚の低下の患者さんで、神経内科領域の病気かどうかはまず鼻疾患(鼻炎・副鼻腔炎・感冒等)を除外する必要があります。 一側性の嗅覚低下は嗅神経の障害の可能性が高くなります。 
  
  嗅神経は前頭葉(大脳の前方部分)の底面(頭蓋骨内面)を走行しています。 その為、頭蓋外傷での機械的損傷、脳腫瘍等の圧迫を受けやすく、これらは嗅覚障害の原因となります。 また嗅神経自体の腫瘍、周辺の腫瘍(髄膜腫)、動脈瘤(脳の動脈にできたこぶ)、脳底部に波及した脳炎(単純ヘルペス脳炎)等が原因の場合もあります。 
  
  病気の中で、アルツハイマ−病、パ−キンソン病、ハンチントン舞踏病(遺伝性の病気で、手足の不随意運動、痴呆等出現)等で嗅覚の障害が報告されています。 嗅覚障害があると、味覚も低下して感じられますが、味覚の神経支配は顔面神経(第Z脳神経)です。 また心因性(ヒステリ−)による嗅覚障害も起こり得ます。 この場合は精神科のコンサルトが必要です。