発汗異常について

  

  汗をかくこと(発汗)は体温調節の重要な機能です。  この発汗をコントロ−ルしているのが、*自律神経系の*交感神経です。 体温調節に関与する中枢は視床下部(大脳の正中底部にある自律神経の中枢)にあります。 そこの神経細胞からの神経線維は、脳幹,脊髄,、交感神経節(脊椎両外側にあり交感神経細胞の集まっている器官)を経由して、全身の皮膚の汗腺(汗を出す終末器官)・血管に分布しています。 体温が上昇すると、まず視床下部がこれを感知し、これらの神経系を介して、汗腺から汗を出し、また血管を拡張させて熱を放出します。
 
  汗腺はアポクリン腺エクリン腺の2種類があります。 アポクリン腺は、腋窩・陰部など多毛部に多く存在し、思春期になると活発となり、粘りけと臭いのある汗を出します。 エクリン腺は全身に分布し、体温がある閾値を越えたときに発汗し、温熱性発汗といいます。 顔面・手掌・足底・腋窩は精神的興奮でも発汗し精神性発汗といいます。 精神的緊張時に手掌や、足底に過剰の発汗を生じ日常生活に困難を来す状態を手掌・足底多汗症といい、日本人の0.6〜0.8%(岩瀬 敏ら、より引用)に認められます。 発汗の異常は全身性のものと、身体の一部(右又は左半身とか、顔面など)に発汗過多又は低下を示すものがあります。 
  
  発汗の異常が他の病気(*甲状腺機能亢進症での発汗過多とか、*シャイ・ドレ−ガ−症候群での発汗低下など)の部分症状の場合は、基礎疾患の診断でその異常が見出されます。 他に身体の異常症状が無く、発汗の低下(全身的または部分的にしろ)のみの場合は、案外気付かれない場合もあると思います。入浴時(身体を温めたとき)に全身がヒリヒリしたり、気温の上昇時に体温が上昇(うつ熱)したり、満員電車に乗った時、顔面の半分が汗をかかない等の症状のみで気付かれる事もあります。 特に身体の一部に汗が出ない場合は、神経学的な精査(脊髄、末梢神経、視床下部に異常がないか等)を要します。 


*自律神経には*交感神経と副交感神経があります。 
  交感神経は自己生命保存の為、外界の刺激に応じて、即時に生体を適応させます。 すなわち、瞳孔の散大、心拍や呼吸数の増加、心臓や筋肉への血流の増加、直接生命維持に関係しない機能の抑制(腸管の運動など)などです。 一方、副交感神経はこれとは逆の働き、すなわちエネルギ−を蓄える反応です。 瞳孔の収縮、心拍の低下、腸管の運動や分泌の増加などです。 

#*甲状腺機能亢進症とは
   甲状腺ホルモンの分泌亢進で、身体の代謝が亢進し、汗が出やすくなったり、頻脈、手の振るえ、疲れやすいなどの多彩な症状を呈する内分泌疾患です。

#*シャイ・ドレ−ガ−症候群とは:
  成人(40〜60歳台)で発症し、起立性低血圧を中心として排尿障害、発汗減少、インポテンスなどの自律神経症状を生じ、これに小脳症状やパ−キンソン症状等加わり、緩徐進行性に経過する中枢神経の変性疾患です。