インフルエンザ

 インフルエンザは毎年冬季に流行します。その流行は11月から始まるときもあれば2月になってからの時もあります。インフルエンザウイルスにはA型、B型、C型の3種類がありますが、よく流行するのはAソ連型、A香港型、B型ウイルスです。

診断用キット


 インフルエンザ抗原検出用キット で鼻汁や咽頭ぬぐい液からインフルエンザ抗原 が検出できれば、インフルエンザA 或いはインフルエンザBと診断することができます。

症状


 全身症状と呼吸器症状が主でこれに消化器症状が伴うことがいいようです多いようです。全身症状としては発熱が強く、まず38.5度以上の高熱が突然に起こり、寒気、頭痛、のどの痛み又はのどの違和感、腰や背中の痛み、関節の痛み、鼻水、咳などを伴い急激に発症します。時に声がかすれたり、鼻血がでることもあります。発熱は平均4日間続き、その後熱が下がっても元気が出ません。熱が下がった後もう一度発熱するもの(30〜70%にみられる)や5〜7日間も続くものもあります。咳は最初は乾いた咳で次第にひどくなり熱が下がった頃が最高で、全経過は1週間ほどです。熱が下がった後消化器症状としては嘔吐、下痢、腹痛がみられることがあります。
 小児のインフルエンザの症状は大人のように典型的ではなく、腰の痛みや関節の痛み、のどの痛みなどは年齢が小さいほどはっきりしないようです。乳幼児の場合は発熱も1〜2日と短く症状も経過も大人、学童に比べ軽いようです。(2歳未満児では発熱のみのこともあります。)

合併症

 最も頻度が高く重要なのは下気道合併症で(気管支炎、肺炎)でまれに心合併症(心筋炎、心膜炎)や神経合併症(熱性けいれん、顔面神経麻痺、脳炎、脳症、ライ症候群、ギランバレー症候群)もみられます。 上に述べた症状や経過と様子の違うものは合併症を起こしていることもありますので注意して下さい。

治療

1.安静と水分補給
 身体を休めてひたすら治るのを待つしか手はありません。部屋は暖かくして湿度は50%以上に保ち、水分特に緑茶や紅茶を頻回に取るようにして下さい。
2.抗ウイルス剤
 抗ウイルス剤{アマンタジン、商品名シンメトレル}の使用が奨められている。アマンタジンは、A型インフルエンザに有効でワクチンと同等の70〜80%の有効性が認められています。インフルエンザA及びインフルエンザBにも効果のあるタミフルやリレンザも使用できるようになりました.発症後48時間以内に投与すると症状を抑える効果があります。
3..その他の薬 
 症状を和らげるために、咳止め、痛み止め、細菌感染の合併症を防ぐために抗生剤を投与します。解熱剤は最小限にしたいものです。
(注意)
 新聞報道などでご存知のことと思いますが、米国においてサルチル酸製剤(アスピリン、アスピリンナトリウムサリチル酸ナトリウム、サザピリン、サリチルアミド、エテンザミド)ライ症候群との関連性を示す調査報告があるので、わが国においてもアスピリンなどのサルチル酸製剤は15歳以下の子供で水ぼうそうやインフルエンザの患者に投与しないことが原則とする厚生省通知がありました。  ライ症候群とは小児において極めてまれに水痘(みずぼうそう)、インフルエンザなどのウイルス性の病気の引き続いて、激しい嘔吐、意識障害、けいれん(急性脳浮腫)と肝臓ほかいろいろな臓器の脂肪沈着、ミトコンドリア変性、GOT・GPT・LDH・CPKの急激な上昇、高アンモニア血症、低プロトロンビン血症、低血糖などの症状が短期間に現れる死亡率の高い病態です。
 総合感冒剤として処方されているP・L穎粒やピーエイ錠、LLシロップにはサルチル製剤の1つであるサリチルアミドが含まれています。
 なお、市販されています小児用バッフアリン、バッフアリンにもアセチルサチル酸が含まれていますので、インワルエンザ、みずぼうそうの時には使用しないようご注意ください。  又その他の市販の風邪薬についても上記のサルチル酸製剤が含まれていないかお確かめください。

4.予防

インフルエンザワクチン
 インフルエンザワクチンの有効率は70〜80%とされています。これでインフルエンザワクチンの有効性がないという人もいます。インフルエンザでは同じ亜型のウイルスに何度もかかります。インフルエンザは免疫のできにくい感染症です。したがってインフルエンザワクチンの効果は、かかる、かからないというレベルで判断すべきではありません。重症化を防ぐというレベルで考えてください。
 インフルエンザは潜伏期が短く1〜3日で発病します。このとき血液中にもウイルスが入ります。従ってインフルエンザワクチンで血液中の抗体を高めておくことは、ウイルス血症を防いだり減少させたりするのに有効なはずです。
 ある病院小児科の経験では脳症、脳炎、肝炎、ライ症候群あるいは死亡例で、ワクチンを受けていてなったものは少ないとされています。また外来患者でみても2回発熱する例はワクチン接種者に少なく発熱期間も短縮され軽症に経過するといわれています。
 私は発病阻止より重症化を防ぐ目的でインフルエンザワクチンを奨めています。

 ワクチンは10月〜12月に3〜4週間隔で2回接種するのがよいでしょう。(年長児、大人では、毎年やっているのなら年1回の接種で効果があるともいわれています。)
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