熱射病

 夏には日射病に気をつけ、水分を十分に摂取しましょう。

気温が高く、湿度の高い環境で長時間,運動などを続けた場合に起こる熱性障害は一般的に熱中症と言います。熱中症は重症度や初発症状により熱けいれん,熱疲労,熱射病の3つに分類されます。

体温は熱産生と熱放散のバランスにより決定されますが,熱の放散は伝導,対流,輻射,蒸泄の4つの方法により行われます。環境温度が上昇した時には汗の蒸発による熱の放散が重要な因子となりますが,多湿環境下ではこの作用が低下し,熱中症が起こりやすくなります。乳幼児は体表面積当たりの運動代謝による熱産生が高く(生後5か月にピークに達します),発汗による熱放散は成人に比べゆっくりでですので,熱性障害が起こりやすいのです。学童では長時間スポーツに集中し,水分を十分摂取しないことも誘因となります。

1.熱けいれん:熱性障害の中で最も多い症状で,通常高温下で長時間の激しい運動により起こります。

症状としては骨格筋,特に下肢から始まる筋肉痛で、腹部の筋肉に及ぶこともあります。普通,呼吸、体温などは安定しており,意識も保たれています。

2.熱疲労:一般に日射病と呼ばれるもので高温多湿の環境下で激しい運動による発汗など大量の細胞外液を喪失した時に起こります。体温調節機能は障害されません。発症は徐々に起こり臨床的には頭痛,めまい,筋肉痛,嘔吐などがみられます。体温は正常かやや上昇していますが,おおむね40℃以下です。意識は通常保たれていますが時間、場所などがわからない場合もあります。

3.熱射病:熱射病は熱中症の中で最も重篤な病態で,高温多湿下における急性の体温調節中枢の機能障害に起因する.通常体温は41℃以上(4143)で,高体温,中枢神経症状,発汗停止が3大特徴です。

治療

1.熱痙攣:涼しい所やクーラーのある部屋で安静に保ち,経口的に水分を補給します。飲めない場合には点滴輸液します。

2.熱疲労:衣服を取り除き,涼しい環境下に置く.経口摂取が十分できる場合は水分を与え,知覚障害のある場合や脱水症状が高度の場合には輸液療法を行います。

3.熱射病:最も重篤な熱中症で救急処置が必要で、救急車で病院へ搬送し治療を行います。

予防:

 熱中症は予防することが最も大切です。乳幼児の厚着や炎天下で窓を閉めきった車中は78℃にも上昇することが知られており,長時間放置しないよう注意します。

年長児の運動に際しては急激な運動は避け,徐々に運動量を増加させ,水分を十分補給することが必要です。