熱性けいれん

熱性けいれんとは

 乳幼児期(生後6ヶ月から5歳まで)には発熱時にひきつけ(熱性けいれん)を起こすことがしばしばあります。子どもの100人中7〜8人は経験する症状です。熱性けいれんは多くは熱(38度以上)が急にあがり始めた時に起こります。ひきつけにに気づいて初めて熱に気づくようなこともよくあります。
 熱性けいれんを経験した子の2/3は生涯を通して1回きりですが、残りの1/3は2回以上経験します。3回以上経験するのは熱性けいれんを経験した子の9%位とされています。6歳頃には見られなくなります。
 熱性けいれんは熱で引きつけを起こしやすい体質によるもので、親や兄弟に熱性けいれんの経験のある場合比較的よく見られ、遺伝的素因に関与が考えられます。
 数分以内に治まる熱性けいれんでは後遺症を残すことはありません。熱性けいれんを繰り返していると「てんかん」になるのでは思われがちですが、「熱性けいれん」から「てんかん」への移行はないと考えられています。

ひきつけの処置

 引きつけが起こったときは、あわてないこと。静かに寝かし、その状態でけいれんの様子を観察して下さい。(後で医師にけいれんの様子を詳しく伝えられるように)吐きそうなしぐさをした時には吐物が喉につまらないように顔を横向けにします。
 ひきつけの時に舌をかまないようにと口にものを入れたりしますが絶対にやらないで下さい。入れたもので口の中を切ったり、誤飲してしまうこともあり非常に危険です。ひきつけで舌をかむことはほとんどありません。
 ひきつけは大体は5分以内で治まります。10分以上続くようならけいれんの途中でも救急車を呼びかかりつけ医を受診して下さい。
 熱に伴ってみられるけいれんには、まれに脳炎とか髄膜炎もありますので、けいれんが止まったら初めての時は単なる熱性けいれんかどうか確かめる必要があるのでかかりつけ医や時間外なら救急診療所などを受診しましょう。
 熱性けいれんを何回か経験している場合は、以前の症状と特に変わりがなければ落ち着いてからかかりつけ医を受診し、夜間なら翌日受診しても問題ないと思います。

ひきつけの予防

 熱性けいれんは特に予防しなければならないものではありませんが、発熱の度に熱性けいれんを起こすようなら薬によって予防することができます。
 熱性けいれんは体温が急激に上昇する時に起こりやすいので、37.5度前後の発熱に気づいた時、できるだけ速やかに処方されている坐薬を肛門内に深めに挿入します。
 そして38度以上の発熱が続く場合には8時間後にもう一度だけ坐薬を挿入します。これで発熱から24時間は熱性けいれんを予防することが可能です。熱性けいれんの90%以上は発熱が始まってから24時間以内におこります。従って2回目以後は原則としてそれ以上坐薬を使用する必要はありません。

 ひきつけ止めの坐薬と解熱剤の坐薬をと併用するときは、同時に使うと引きつけを抑える効果が下がりますので下、少なくとも30分以上間をあけて使用して下さい。(飲み薬でも引きつけを予防する薬があります。)

脳波検査

 脳波の検査は典型的な熱性けいれんでは初回から検査をする必要はありません。しかしけいれんが長かったとか、けいれんの症状に左右差があった場合とか回数が多い時(3回以上)には脳波検査を受けておくべきでしょう。

熱性けいれん児に対する予防接種基準案
(1)対象
 単純型熱性けいれんで、1カ月以上けいれんが無い児。
 複合型熱性けいれんの場合は、最終発作から3ヵ月以上経過して接種することが望ましい。 初回のけいれん発作の場合は、てんかんや変性疾患等の鑑別のため2〜3ヵ月の観察期間をおいた後に接種することが望ましい。

 ただしポリオ、BCGは、・、・の場合も発作から1ヵ月以上経過すれば接種可能である。
これらの接種基準は、接種を受ける小児の状況により、主治医の判断で変更可能です。.
る。

 ここで複合型熱性けいれんとは、以下の項目のうち、1項目でも該当する者をいいいます。

 ・熱性けいれん発症前の明らかな神経学的異常もしくは発達遅滞

 ・生後6ヵ月未満および5歳以降の発症

 ・非定型発作 (i)部分発作
         (ii)発作の持続が15分以上
        (iii)24時間以内の発作の反復
(2)予防接種の基本的な事項

 現行の予防接種はすべて行って差し支えない。ただし、接種する場合には次の事を行う必要
があります。

 ・両親、保護者に対し、個々の予防接種の必要性、副作用、有用性などについて十分な説明
  と同意に加え、発熱、けいれん及びけいれん予防の対策を指導する。

 ・主治医、または小児神経医もしくは予防接種担当医が個別に接種します。

 ・発熱、けいれん及びけいれん予防に対する対策

  発熱の予測される予防接種(特に麻疹)では発熱を認めたらジアゼパム坐薬、経口剤のい
  ずれかを予防的に投与します。万一けいれんがおこってしまった場合、主治医などに相談しましょう。

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